田辺聖子先生の作品は、大阪を舞台にした等身大の恋愛小説

田辺聖子さんは、誰もが知っている有名作家さんです。

それもほとんど全てが恋愛小説。

 

恋愛小説と聞けば、ハーレクインロマンスのような、美しい女性が旅に出て、そこで出会ったステキな男性と恋に落ちる。

そのような女性が夢見るロマンチック満載の物語だと想像してしまいそうですが、田辺聖子さんの描く世界は全くそれとは違います。

彼女の描く世界は、等身大の恋愛物語でした。

 

田辺聖子全集の口絵

★田辺聖子全集の口絵

 

それも舞台は東京よりも関西のそれも最も個性が強烈な大阪を舞台にした物語が中心とされます。

話す言葉も、大阪弁がほとんどで、それもそのはず、田辺聖子さんは生粋の大阪人です。

けれど、大阪の景色、大阪の言葉、人間関係も大阪風に描いて、それでいて恋愛小説を書いて大成するなど、大変めずらしいことでした。

 

多分ほとんどの読者は、田辺聖子さんの小説を良くあるロマンチックな恋愛小説だと思って読むと、驚かれると思います。

ほとんどが大阪の町並みや人情ある交流や美味しい食べ物の紹介、そういった街で主人公は生活している様をこれでもか、とばかりに克明に描いていく。

そこからが先生の世界の始まりです。

 

主人公にしても、決して特別美しい女性ではなく、年齢もハイミスだったりして、毎日会社と自宅の往復で、友達はいて、男友達もいるけれど、肝心の彼氏がいない。

そんな普通の女性の恋愛物語を描いていくのです。

 

恋愛のお相手に関しても、特別カッコいいわけでもなく、お金持ちなわけでもない、ロマンチックな言葉をかけてくれるわけでもない、ごく普通の男性。

ですから、女性が夢見る条件はほとんど無いともいえるお話ですが、それでも、いやそれだからこそ? 先生の作品は支持され続けているのです。

 

図書館の田辺聖子先生コーナー

★図書館の田辺聖子先生コーナー、著作がいっぱい

 

田辺聖子先生の作品が支持され続けている理由のひとつに、生の関西を描ききっているということがあるでしょう。

 

朝の通勤の忙しさから昼は会社で忙しく働き、噂話に興じる。

そして夕暮れには、家路を急ぐ人々がどのように生きているか?

まるで自分が物語の中に存在して、その世界に生きている……そんな気にさせてくれる作品です。

 

かく言う私も、そんな田辺聖子先生の作品に深く魅力を感じたものの一人です。

 

それは、私も大阪人だからでもあります。

 

大阪で生まれ、大阪で育つものには田辺聖子さんといえば、一番親しみを感じる女流作家なのです。

先生の描く大阪は人情と優しさが溢れていています。

普段見慣れている大阪の景色を彷彿とさせ、「そうか、大阪ってこんなにいい町だったんだ」と改めて再認識させてくれます。

 

大阪・道頓堀の風景

★大阪・道頓堀の風景

 

背伸びしない恋愛物語は、現実の厳しさと何処か悲しいお話の展開が待っています。

けれど、だからこそラストには何かしらの感動に向かっていけるのです。

 

以前、先生は「徹子の部屋」に出演なさったときにおっしゃいました。

 

「私の描いたかなり昔の小説、この子達がいまだに良いお仕事をしてくれるんですよ」
(昔の作品が今でも売れ続けているということ)

 

そのことを「何故なのでしょう?」と聞かれたとき、先生は言いました。

 

「今も昔も恋する心は変らないからでしょう」

 

この返答を聞いてやはり先生はただものではないな、と感服した次第です。

 

このブログでは、僭越ではありますが、大好きな田辺聖子先生のおすすめ作品を紹介していきたいと思います。