初めて読んだ長編小説が田辺聖子先生の『窓を開けますか?』でした。

私が田辺聖子先生の小説を初めて眼にしたのは、小学校6年くらいでした。

 

当時の私の読み物は、漫画ばかりで、小説など眼中に無かったのですが、それでも大人になったら漫画は卒業して小説を読むものだと、何故か決め付けていたのです。

 

そのため、少しずつ小説を読む努力をするべきかな、と考え、姉の本箱の中から一冊拝借することにしました。

姉と私は4才違いなため、何冊かの小説を所持していました。

その何冊かの中に含まれていたのが田辺聖子先生の小説だったのです。

 

タイトルは『窓を開けますか?』。

 

窓を開けますか?

★田辺聖子先生『窓を開けますか?』単行本

 

何とも不可思議なタイトルで、当時の私は何の本か悩んだものです。

それでも、文字数が少なめで、難しい内容ではない様子なので、これを拝借することに決めました。

 

ストーリーは、30歳くらいのOL亜希子は現在不倫恋愛を楽しんで暮らしている。

最初は仕事もあり、同僚もあり、男友達もあり、不倫の恋人もありで人生を謳歌しまくっている女性でした。

けど途中から不倫相手と上手くいかなくなり、そこから不穏な空気に包まれて亜希子の迷走がはじまり人生を考え始めます。

不倫相手と別れて新しい人とやり直すのかと思われるお話の流れでしたが、最後に亜希子が下した決断は。・・・

 

物語のタイトルの

「窓を開けますか?」

これは亜希子が最後に選んだ男性にかけた言葉です。

これを言って物語は終わるのです。

 

窓を開けるとは、空気を入れ替える、風を通すため、太陽の光を直接浴びるため、いろんな意味を持ちます。

共通する目的は、部屋の何かをガラッと変化させる、そのためです。

この言葉は亜希子が彼との新しい関係を意味する、そんな予感をさせるためのキーワードとも言えるのです。

 

窓

 

さりげない普通の日常会話が田辺先生の手にかかれば、まるで魔法の言葉にように輝きます。

とても良い終わり方でした。

 

私個人の意見としては、亜希子は不倫をしているわけで、それも後ろめたく思ってる気配など微塵も無く、友達にも堂々と言ってのけるあたり好感が持てないヒロインでした。

それなのに、先生の人をひきつけてやまない文章力のおかげで、このように自分勝手な主人公の生き方でも途中で読むのを止めることが出来ず、とうとう最後まで読みきったのを覚えています。

 

それどころか、何度も読み直してしまうのです。

 

初めて小説を読んだのにも係わらず、田辺聖子ワールドの魅力にすっかり取り付かれてしまいました。

 

これ以降、姉の本棚にある田辺聖子先生の小説を読み漁りました。

 

先生の作品は基本一冊の本で完結するのが主流で、読みやすくもあり、どんな人にもおすすめすることができる珍しい作家さんだと思います。

 

中には短編集もあって、その中でもひきつけられる作品がいくつも登場し、こんなに感性が鋭い女流作家はめったにいないことを認識させられました。