『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』~日本のシンデレラストーリー

「舞え舞え蝸牛、またの名を落窪姫」という平安時代を舞台にした物語をご存知でしょうか?

この作品は、あの有名な源氏物語よりも以前に書かれていて、あまりに古いため作者不明です。

その内容は、和製シンデレラストーリーで、実に女性が憧れるようなお話なのです。

私は原作は読んだことはありません、田辺聖子先生が書き下ろしたものだけです。

作品名は『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』です。

 

田辺聖子先生『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』単行本

★田辺聖子先生『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』単行本

 

人づてに聞くと、絶対そのほうが読みやすく面白い、といわれました。

読んでみてそれは私も思いました。

だって先生の描いた落窪姫は、非常に田辺聖子ワールドを感じさせる世界であったからです。

 

そもそも平安時代の貴族の結婚といえば、通い婚で、男性は複数の妻を娶ってもかまわない。

夫が妻を気に入らなくなれば、通うのを辞め、疎遠になっても仕方ない、男性に有利な条件でした。

 

けれど、先生の描いた落窪姫の世界は、主役の落窪姫以外は、侍女の阿漕、継母の北の方など強くて、夫を上手く操縦するやり手ばかりが登場します。

華やかな貴族社会を描いていながら、先生特有の笑いと人情が何処かしら感じられ、しかもそれはピースにピッタリとはまった魅力的な小説に仕上がりました。

 

『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』文庫本

★『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』文庫本

 

落窪姫は、美しく優しく育ちながら、実の母親が早くに亡くなったばかりに継子の北の方にいじめ暮らしていました。

しかし侍女の阿漕が落窪姫の味方となり、ついには飛ぶ鳥も落とす勢いの人気の公達、右近衛少将を落窪姫の夫にさせるのです。

 

最初は右近衛少将は、気まぐれに落窪姫を一晩盗めば良い、くらいに思っていましたが、姫の美しさと可憐さに胸打たれ、本物の恋をしてしまいます。

プレーボーイの名を返上し、姫をただ一人の妻にし、愛していく決意をします。

 

阿漕の思惑通り、落窪姫と右近衛少将は愛し合い、これで上手くいくかと思えば、それを知った北の方が二人を引き離す計画を画策します。

これって平安時代のシンデレラ、またはロミオとジュリエットのようで、女性が夢中になるエッセンスだらけなんです。

 

『舞え舞え蝸牛』は何度も読み直していますが、いまだに飽きない作品です。

世間では『源氏物語』のほうがずっと有名ですが、ストーリーとしてはこちらのほうがずっと面白いです。

だって源氏物語は、主役、光源氏は義理の母親藤壺の宮を愛し、その面影を持った女人を妻にしていったり、それ以外の女人も愛人にしたりと、真面目に描いていますがかなり多情な男性。

藤壺の宮に似ていて妻にした紫の上を一番愛していたと最後に気づいたけれど、彼女は先に亡くなっていき、その後彼のプレーボーイぶりはなりを潜め、寺にこもって最後を閉じるまでの話でした。

 

初恋の女性面影を追って愛する人を求めていくとは聞こえが良いですが、早くいえば浮気ものなだけ。

女性に人気の『源氏物語』ですが、ここに疑問を持つ女性も一杯います。

 

『源氏物語』は実に男性中心な考えだとしたら、『落窪物語』は実に女性中心な考えの物語。

だから私は女性中心な『落窪物語』、またの名を『舞え舞え蝸牛』が好きなのです。

 

角川文庫『おちくぼ姫』

★角川文庫『おちくぼ姫』

 

大人には『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』がおすすめですが、小中学生の入門には角川文庫から出ているかわいらしい装丁の『おちくぼ姫』がおすすめ。

古典に特に興味がないという方もきっと楽しめるおすすめの作品です。