『愛してよろしいですか?』は一番好きな作品かもしれません!

『愛してよろしいですか?』。

『愛してよろしいですか?』

★『愛してよろしいですか?』

 

田辺聖子先生の作品でお気に入りは数々ありますが、『愛してよろしいですか?』はもしかして一番好きかもしれない作品です。

こちらの作品は単行本、文庫本ももちろんありますが、『田辺聖子全集』の11巻に所収されています。

 

『田辺聖子全集』第11巻

★『田辺聖子全集』第11巻

 

『田辺聖子全集』の11巻の口絵には、「愛してよろしいですか?」の歴史が満載で楽しめます。

まずは「愛してよろしいですか?」連載時の「週刊明星」誌面。

記念すべき連載第一回目の画像です。

 

『愛してよろしいですか』連載時の「週刊明星」誌面

★「愛してよろしいですか?」連載時の「週刊明星」誌面

 

続いて『愛してよろしいですか?』装丁の歴史。

 

『愛してよろしいですか』装丁の変遷

★『愛してよろしいですか』装丁の変遷

 

そしてなんと、NHK銀河テレビ小説「愛してよろしいですか」、ドラマです!

 

NHK銀河テレビ小説「愛してよろしいですか」

★NHK銀河テレビ小説「愛してよろしいですか」

 

これは見たいです…。どうにかして見れないのでしょうか?

「愛してよろしいですか」は1984年5月7日~6月1日放送、脚本:北村篤子。
出演:三林京子、時任三郎、岸部一徳、山田スミ子、山城新伍(出典:Wikipediaより)

NHK銀河テレビ小説では、田辺聖子先生原作のドラマをいくつか放送していたみたいですね。

 


さて、作品の話に戻りましょう。

この作品にであったときは、もう既に田辺聖子ワールドにはまった後ではありましたが、それでもこの「愛してよろしいですか?」を読んだ後、さらに先生のすごさに脱帽しました。

 

田辺聖子先生『愛してよろしいですか』扉

★田辺聖子先生『愛してよろしいですか?』扉

 

それというのも、お話の内容が、34歳のハイミスすみれが12歳年下の大学生ワタルに恋をするという、現在ではありうる話ですが、この本が発表された年代では、聞いたことが無い年の差恋愛でした。

男側が12歳年下など、ずいぶん思い切ったなあ、そんなの成立するの?と不安になりつつ読み進めてみると、最初の不安は何処へやら。

ストーリーの面白さにはまる、はまる、あっという間に終わってしまいました。

12歳年下男性との恋なのに、やけに明るい展開で見ているこちら側まで楽しくなる、そんなお話でした。

 

ストーリーは、イタリアでの旅先で知り合った男の子と話が合い、旅先でデートしたことがきっかけで、日本に帰った後も会い続け、恋愛に発展していきます。

何故それがこんなに良いと思えるのか、というと、年下の彼氏ワタルが非常に魅力的な男の子なのです。

 

イタリア

 

若い分、物怖じせず、ハイミスのすみれに話しかけてきて、イタリアでデートした後でも会いたくなれば、すぐに電話して誘ってくる。

しかも、明るくて優しい。

すみれの会社での愚痴でさえも、興味深く聞いてくれて、

 

「スウちゃんは偉い、頑張ってる」

 

と励ましてもくれる、女性が一緒にいて癒されるタイプの男の子だったのです。

 

主人公すみれは、12歳も年下なんだから、その場の付き合いでまさか恋愛感情が起こるなど思いもしなかったのですが、ワタルの魅力にどんどん惹かれて行きます。

けど自分はもう34歳。

彼からしたらしっかりオバサンなんだから、本気になっちゃいけない……そんなすみれの心の葛藤が読む人に共感を与えます。

 

こんなすみれの心がわかりすぎるほどわかるシーンが、ワタルと美術館へ行ったとき。

あまりの満員にワタルと離れ離れになってしまい、ようやく外に出てみれば、ワタルが他の女の子と話をしていました。

 

白いワンピースの女性

 

白いワンピースを着たその女の子は、ワタルと並んでいてとてもお似合いのカップルにすみれには見えてしまったのです。

自分には無い若さを持った二人を見て、いかにすみれがショックなのかが、手に取るようにわかる名シーンです。

 

それでもワタルは、

 

なんでかなあ、僕あんたといると他の女の子といるより楽しいねん。

 

と言ってくれる。

これって、最強のくどき文句じゃないですか!?

 

そしていよいよワタルと結ばれる時。

すみれは、

 

私はあの白いワンピースの少女と同じ年頃の気持ちになった。

 

と心の中で語ります。そこにも深く共感できますね。

 

物語は現実を描いていながら、実にロマンチック。

 

お金持ちでハンサムな紳士ではないけど、若くて優しく性格も良く、たまに男らしい一面も見せてくれる最高の男性像を先生はこの作品で見せてくれました。

田辺聖子先生の描く男性で多分一番人気がこの『愛してよろしいですか』のワタルであることは間違いないです!

ぜひ読んでみてください!!

 

『田辺聖子全集』第11巻の月報

★『田辺聖子全集』第11巻の月報

 

ちなみに、『田辺聖子全集』第11巻の月報は川上弘美さんと酒井順子さん。

こちらも必読です!

ちなみに、管理人は蔵書がたくさんあります。このホームページを見に来てくださった方も本好きでたくさんの書籍をお持ちと思います。

ですが、意外とかさばるんですよね。

背表紙が焼けないような書斎があればいいのですが、そんな広い家というのも難しいところ。

そこでおすすめなのがトランクルームでの書籍の保管です。

本棚ひとつ分くらいから、収納スペースをレンタルできるのでほんとうに便利です。

さらには、トランクルームは、家の建て替えや海外赴任などの引っ越しでも活用できます。

 
引越しの預かりオプション。荷物をトランクルームに一時保管!

 

【外部リンク】引っ越し荷物の預かり http://www.xn--u8jxa8mz64p9s9b4gn.com/

こちらは管理人が、自分の長期旅行の際に家財をトランクルームに預けた経験を元に作ったホームページです。

恥ずかしながら記事をまとめましたので、書籍の保管場所や引っ越しでの一時預かりなどの場所を探している人は参考にしてみてください。

『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』~日本のシンデレラストーリー

「舞え舞え蝸牛、またの名を落窪姫」という平安時代を舞台にした物語をご存知でしょうか?

この作品は、あの有名な源氏物語よりも以前に書かれていて、あまりに古いため作者不明です。

その内容は、和製シンデレラストーリーで、実に女性が憧れるようなお話なのです。

私は原作は読んだことはありません、田辺聖子先生が書き下ろしたものだけです。

作品名は『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』です。

 

田辺聖子先生『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』単行本

★田辺聖子先生『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』単行本

 

人づてに聞くと、絶対そのほうが読みやすく面白い、といわれました。

読んでみてそれは私も思いました。

だって先生の描いた落窪姫は、非常に田辺聖子ワールドを感じさせる世界であったからです。

 

そもそも平安時代の貴族の結婚といえば、通い婚で、男性は複数の妻を娶ってもかまわない。

夫が妻を気に入らなくなれば、通うのを辞め、疎遠になっても仕方ない、男性に有利な条件でした。

 

けれど、先生の描いた落窪姫の世界は、主役の落窪姫以外は、侍女の阿漕、継母の北の方など強くて、夫を上手く操縦するやり手ばかりが登場します。

華やかな貴族社会を描いていながら、先生特有の笑いと人情が何処かしら感じられ、しかもそれはピースにピッタリとはまった魅力的な小説に仕上がりました。

 

『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』文庫本

★『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』文庫本

 

落窪姫は、美しく優しく育ちながら、実の母親が早くに亡くなったばかりに継子の北の方にいじめ暮らしていました。

しかし侍女の阿漕が落窪姫の味方となり、ついには飛ぶ鳥も落とす勢いの人気の公達、右近衛少将を落窪姫の夫にさせるのです。

 

最初は右近衛少将は、気まぐれに落窪姫を一晩盗めば良い、くらいに思っていましたが、姫の美しさと可憐さに胸打たれ、本物の恋をしてしまいます。

プレーボーイの名を返上し、姫をただ一人の妻にし、愛していく決意をします。

 

阿漕の思惑通り、落窪姫と右近衛少将は愛し合い、これで上手くいくかと思えば、それを知った北の方が二人を引き離す計画を画策します。

これって平安時代のシンデレラ、またはロミオとジュリエットのようで、女性が夢中になるエッセンスだらけなんです。

 

『舞え舞え蝸牛』は何度も読み直していますが、いまだに飽きない作品です。

世間では『源氏物語』のほうがずっと有名ですが、ストーリーとしてはこちらのほうがずっと面白いです。

だって源氏物語は、主役、光源氏は義理の母親藤壺の宮を愛し、その面影を持った女人を妻にしていったり、それ以外の女人も愛人にしたりと、真面目に描いていますがかなり多情な男性。

藤壺の宮に似ていて妻にした紫の上を一番愛していたと最後に気づいたけれど、彼女は先に亡くなっていき、その後彼のプレーボーイぶりはなりを潜め、寺にこもって最後を閉じるまでの話でした。

 

初恋の女性面影を追って愛する人を求めていくとは聞こえが良いですが、早くいえば浮気ものなだけ。

女性に人気の『源氏物語』ですが、ここに疑問を持つ女性も一杯います。

 

『源氏物語』は実に男性中心な考えだとしたら、『落窪物語』は実に女性中心な考えの物語。

だから私は女性中心な『落窪物語』、またの名を『舞え舞え蝸牛』が好きなのです。

 

角川文庫『おちくぼ姫』

★角川文庫『おちくぼ姫』

 

大人には『舞え舞え蝸牛―新・落窪物語』がおすすめですが、小中学生の入門には角川文庫から出ているかわいらしい装丁の『おちくぼ姫』がおすすめ。

古典に特に興味がないという方もきっと楽しめるおすすめの作品です。

『三十すぎのぼたん雪』所収の「ちびんこにへらんこ」

田辺聖子先生の作品で『三十すぎのぼたん雪』という短編集があります。
30過ぎたボタン雪

 

その中の一遍「ちびんこにへらんこ」。

変なタイトルをつけるのが好きな先生ならではのタイトルの短編作品です。

 

『三十すぎのぼたん雪』目次

★『三十すぎのぼたん雪』目次

 

田辺聖子先生の作品の多くは女性が主役ですが、この作品は珍しく男性が主役です。

舞台は田舎の村で、これも都会を舞台に選ぶ先生には珍しく、おまけに戦後間もなくの頃を描いている、珍しいばかりが目立つ作品です。

 

『三十すぎのぼたん雪』所収「ちびんこにへらんこ」

★『三十すぎのぼたん雪』所収「ちびんこにへらんこ」

 

この「ちびんこにへらんこ」、珍しいのはストーリーもそうです。

田舎の村といえば、性についてはお堅いイメージですが、それは見た目だけのこと。

実際は、男女の付き合いはお盛んで、初体験も早いといいます。

周りの大人も注意はしますが、恋する男女を遠巻きで応援する風潮も田舎ではよくあることです。

 

このお話に出てくる村もそんな風潮が残っていて、しかも時代は、戦後間もなくといったところでした。

戦後といえば、戦争によって大勢の男性が兵隊さんに取られて、返らぬ人となり、日本国内では後家さんを含め、独身の女性だらけになった時代です。

そこで数少ない独身の男性でこのお話の主役である春川さんは、夫がいない後家さんを慰問するという名目で複数の後家さんと男女の関係を持っていました。

 

農村

 

そう聞くと、かなり問題な話に聞こえますが、どういうわけか、このお話に出てくる村人は、男女の色事には皆、寛容なのです。

それどころか村の若い男性達は、春川さんの慰問を応援する空気まである流れで、それも複数の後家さんと仲良くできる春川さんをうらやましいと思ってるからなのですが。

 

しかし、こんなことが出来るのは、春川さんが見た目もいい男で、稼ぎもあり、奥さんも数年前に亡くしたから独身、ということが大きい理由です。

 

それでも浮気願望のある男性達は、春川さんのところへ集まり、慰問団に入団したいと願います。

 

このお話の面白いところは、慰問団に入るにはいくつかの要素が必要だといわれます。

まず、まめであること。

慰問団とはただ、いきなり男女の仲になるのではなく、後家さんであるから男手が必要な仕事は五万とあります。

それを腰軽く手伝ってあげる。

慰問団は親切かつ優しいというのが春川さんの言い分です。

 

次に歌が上手いこと。

それもテレビで聞く歌謡曲などではなく、婚礼の席で歌われる「長持歌」とかが良いといいます。

 

春川サンが「長持歌」を歌う場面

★春川サンが「長持歌」を歌う場面

 

人生の大事な席で歌われる歌を朗々と歌い上げる男性とは、その席にいる全ての人に支持され、女性はウットリとなる唯一の方法らしいのです。

 

また、お相手の女性が噂を立てられぬように落ち合うときは偶然を装うか、出来るだけ遠くで待ち合わせするかにしろ、と指示します。

独身の春川さんはともかく、教えを請うているのは配偶者がいる男性なので、いささか不安を感じながら読み進めていくのですが、このお話にはそういった野暮な邪魔は一切入らず、男性の浮気の理想的な形を描いていくのです。

 

しかし、このお話が悪くない、と思わせるのは、お相手の後家さんが若く美しい女性というわけではなく、むしろ、70歳のお婆さんも含まれているところです。

年齢が高くなってもそれなりの魅力は増す、と思ってくれる男性だと、女性は絶対好意を持ってしまいます。

これも田辺聖子先生ならではの心眼でした。

『孤独な夜のココア』所収の一遍を選ぶとしたら「おそすぎますか」

田辺聖子先生の『孤独な夜のココア』。

 

田辺聖子先生『孤独な夜のココア』単行本と文庫本

★田辺聖子先生『孤独な夜のココア』単行本と文庫本

 

この本は短編集でいくつもの物語が入っているけれど、その中で特に胸に染み入る一遍を選ぶとしたら「おそすぎますか?」でしょうか。

 

『孤独な夜のココア』所収「おそすぎますか」

★『孤独な夜のココア』所収「おそすぎますか」

 

田辺聖子コレクションでは表題にもなっている作品です。

 

田辺聖子コレクション『おそすぎますか?』

★田辺聖子コレクション『おそすぎますか?』

 

主人公の女性は仕事が大好きでいつも忙しい日々を送っている。

そんなある日、彼氏が出来ます。

彼氏は忙しい主人公を癒してくれる理想の男性でした。

 

いつも忙しそうにしている主人公に、

 

「しんどかったか」

 

と優しく言葉をかけてくれる。
彼女は、

 

「うん、しんどかった!」

 

と甘えて言う、そんな関係だった。

 

そんな彼氏を独占したくて結婚を決めますが、彼女の上司は、

 

「あんたみたいな仕事が出来る人が結婚するなんて勿体無い!」

 

それに対して彼女は、

 

「結婚しても仕事は続けます!」

 

と言い切ります。

 

「当たり前や!仕事に反対するやつならさっさと離婚してしまえ!」

 

と彼女の結婚をにがにがしく思う上司。

 

結婚式直前まで仕事に追われ、ようやく隣に座った彼女に彼はやはりこう言います。

 

「しんどかったか」

 

その言葉に彼女は満足しながら、

 

「うん!」

 

と言うのです。

 

けど恋愛と結婚は違います。

恋愛時代は一時を楽しむだけでも成り立ちますが、結婚は毎日同じ家で暮らし、共に食べ、共に眠り、苦楽を分かち合うもの。

彼女は結婚した後も仕事中心の生活で、いつしか彼は不満を覚えていきます。

 

彼女が彼に手を抜いたわけではありません。

少しでも暇が出来れば彼のために手間隙かけた食事を作り、彼のセーターなど編んだりもして甲斐甲斐しくやっていた場面もあるのです。

 

編み物

 

それなら何故?と思うでしょうけれど、田辺聖子先生は男性を鋭く理解されていました。

 

男という生き物は、出来るときに深く愛情をかけたから、忙しくなっても大丈夫などというものではなく、ほうっておくと駄目になる。

非常に寂しがりやな生き物なのだと啓示されたのです。

 

どんなに優しい男性でも、毎日愛情をかけていないと彼の心はすさみ、やがて離れていく。

そして主人公の夫も例外ではなく、我慢の限界が来るのです。

 

このお話の問題は、彼女が彼と同じくらい仕事が好きなことでした。

 

オフィス街

 

仕事と彼のどちらを選ぶか、働く女性なら絶対に選択できない問題です。

仕事は生きがい、彼は愛し癒してくれる存在、これは現在でも十分ありうる働く女性の悩みです。

 

でも、読者としては、彼の寂しさも理解できてしまい、どちらの言い分も間違っていないのです。

答えの出ないまま二人は心が離れてしまい、彼女が最後に取る選択は? となるわけですが……。

 

このお話を読んだときは、心が痛くなる、そんな思いがしました。

 

タイトルの「おそすぎますか」は主人公の心の声です。

私は本当に貴方が好きなのに、わからなかったの?もうおそすぎますか?と夫への未練の声です。

 

短い短編でありながら、読者の心をこんなに締め付けるストーリーは「おそすぎますか」以来お目にかかったことがありません。

『孤独な夜のココア』は特におすすめの一冊です。

 

『孤独な夜のココア』解説

★『孤独な夜のココア』文庫版解説は綿矢りささん